婦人科

婦人科について

 女性の腫瘍に関連する専門医療領域で、良性および悪性の疾患を診療対象とし、高度な技術と幅広い診療経験に基づいて、患者の立場に立った高品質な医療を提供することを目指しています。患者と相談しながら最適な治療計画を策定し、検査結果に応じて必要な場合には、傷跡が小さく体に与える影響が少ない内視鏡手術(腹腔鏡下手術など)を積極的に採用しています。近年、3Dハイビジョン内視鏡を使用した腹腔鏡下手術も導入されており、入院期間の短縮を目指しています。
 さらに、子宮頸部上皮内腫瘍に対しては、妊娠可能性を最大限に保持するためにPDT(光線力学療法)を実施しています。このように、婦人科は女性の健康を維持し、疾患を治療するための包括的な医療ケアを提供する専門領域です。

主な対象疾患

良性疾患

  1. 子宮筋腫(しきゅうきんしゅ):過多月経、頻尿など
  2. 子宮内膜症(しきゅうないまくしょう):過多月経、排便時痛、性交時痛など
  3. 卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ):お腹が張って苦しい、腰痛など
  4. 子宮脱・腟脱(しきゅうだつ・ちつだつ):尿がでにくい、陰部の違和感
  5. 婦人科感染症(ふじんかかんせんしょう):下腹部痛、おりものがきたない、発熱など

などの診断および治療

悪性疾患

  1. 子宮頸がん(しきゅうけいがん):不正出血、性行為の際の出血、下腹部の痛み
  2. 子宮体がん(しきゅうたいがん):不正出血(特に閉経後または更年期)
  3. 卵巣がん・卵管がん(らんそうがん・らんかんがん):初期は無症状、進行すると下腹部のしこり、食欲の低下、頻尿、便秘、足のむくみなど

などの診断および治療

その他の疾患

  1. 月経困難症(げっけい こんなんしょう):月経期間中に月経に随伴しておこる病的症状下腹部痛、腰痛、食欲不振、いらいらなど
  2. 月経前症候群(げっけいぜん しょうこうぐん:PMS):月経前3~10日に出現する精神的あるいは身体的症状で月経初来とともに減退ないし消失する。情緒不安定、いらいら、腹痛、頭痛など
  3. 月経前不快気分症候群 (げっけいぜん ふかいきぶんしょうこうぐん:PMDD):月経前ごとに日常生活に支障をきたす精神症状を主体とした症状を呈する。集中力の困難、うつ病、不安、悲しみ、絶望感、怒りやイライラ、無気力、通常の活動への興味の喪失、食物渇望、不眠症や過眠症など
  4. 異常子宮出血(いじょう しきゅうしゅっけつ)
    原発性無月経:15歳まで、または乳房発育開始後3年までに初潮が初来しない
    続発性無月経:90日以上月経がない
    希発月経:38日以上の月経周期(月経回数が年9回未満)
    頻発月経:24日未満での月経周期
    過長月経:8日以上の出血の持続
    過多月経:生活の質を阻害するほどナプキンやタンポンが濡れる
  5. 更年期障害(こうねんきしょうがい):ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、不眠など

などの診断および治療

診療実績

治療数 2019年度 2020年度 2021年度
婦人科手術件数 474例 396例 417例
腹腔鏡手術件数 153例 143例 157例
良性腫瘍:手術件数 306例 279例 281例
悪性腫瘍:手術件数
(境界病変を含む)
168例 117例 136例
PDT治療症例数 40例 39例 40例

得意分野

1.腹腔鏡下手術

 婦人科の良性疾患に対する手術では、患者のQOL(生活の質)に配慮し、術後の身体的負担が少なく、通常の日常生活に早く戻れる内視鏡手術(腹腔鏡下手術)を積極的に行っています。主に、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫の治療を対象としています。
 具体的な手術方法は、お腹に3~4か所の小さな穴を開けて、腹腔鏡と手術用器具を挿入し、腹腔鏡下での癒着剥離術、腹腔鏡下内膜症病巣除去術、腹腔鏡下卵巣嚢腫摘出術、腹腔鏡下子宮筋腫核出術、または腹腔鏡下膣式子宮全摘出術などを行います。
 特に、3Dハイビジョン内視鏡を使用した新しい腹腔鏡下手術が導入されています。3Dハイビジョン内視鏡システムの主要な利点は、立体視能力であり、奥行きのある視野を提供することで、癒着の剥離や腹腔内での結紮など、腫瘍の安全で迅速な摘出に大いに役立っています。迅速で正確な腹腔内手術操作により、出血量の減少や手術時間の短縮などが期待され、患者に対して安全で高品質な腹腔鏡下手術を提供することができると考えられています。

2.広汎性子宮全摘出術、広汎性子宮頸部摘出術

 婦人科の悪性腫瘍(浸潤がん)に対して、根治性を確保しつつ、できる限り機能の保持と妊孕性(妊娠能力)の維持を目指しています。子宮頸癌の広汎性子宮全摘出術において、膀胱機能の早期回復を促進する骨盤神経温存手術を実施しています。広汎性子宮全摘出術の適応がある場合、同時に卵巣の温存移動術も行っています。
 さらに、子宮頸癌に対する根治性と妊孕性温存を兼ね備えた広汎性子宮頸部摘出術も導入されています。これまでに18例の広汎性子宮頸部摘出術を実施し、術後3例が妊娠し、全ての例で無事に出産が成功しました。

広汎性子宮頸部摘出術について
手術外来について

3. 子宮動脈塞栓術(UAE : Uterine Artery Embolization)

 UAEは、太ももの付け根を約5mmの切開を行い、血管カテーテルを挿入して子宮を栄養する血管である子宮動脈を塞ぐ塞栓物質を使用する治療法です。この方法により、子宮筋腫に血液供給を減少させ、筋腫の縮小が可能となります。子宮筋腫の体積は通常、3ヶ月で約50%、6~12ヶ月で約30%まで減少することが期待されます。治療には一時的に強い疼痛が伴いますが、当院では麻酔科と協力し、経静脈的な患者管理鎮痛(IV-PCA)を行っています。

担当医師:坂本 優

子宮動脈塞栓術(UAE : Uterine Artery Embolization)に関する説明書

4.PDT(光力学療法)

 子宮頸部初期癌および子宮頸部異形成に対して、従来の円錐切除術や蒸散法に加えて、PDT(光力学療法)を積極的に導入しています。この治療法は、当院が国内で最初に導入したものです。PDTは、特定の薬剤を静脈注射した後に、レーザー光線を病変部に照射してがん細胞を破壊する治療法です。
 PDTは出血や強い痛みが伴わず、麻酔は必要ありません。一方で、従来の円錐切除術では子宮頸部の一部が切除され、子宮頸管の短縮や頸管粘液の減少が起こるため、妊娠後に早産のリスクが高まることがあります。しかし、PDTは低出力のレーザーを使用し、光化学反応を通じてがん細胞を選択的に破壊するため、子宮頸部の形態と機能を最適に維持しつつ、妊娠と出産を望む患者さんに適しています。現在、PDTを希望する患者さんの中には、20代と30代のシングルの女性が増えています。

PDTおよびPDT外来について

診療体制と診療方針

外来

 当院の外来は、5名の常勤医師と3名の非常勤医師(そのうち女性医師2名)から成り立っており、幅広い疾患に対応しています。上記に挙げられた疾患については、どの医師でも診療が可能です。ただし、手術療法やPDT(光線力学療法)など、入院が必要と思われる場合には、なるべく常勤医師が優先的に診療し、迅速に入院・治療を行えるようにしています。
待ち時間を短縮するため、初診と再診の両方について予約制を採用していますが、予約のない患者さんも予約診療の合間で随時診察させていただきます。

PDT外来のお知らせ

 子宮頸部初期癌および子宮頸部異形成に対する従来の円錐切除術は、早産のリスクが高まり、子宮頸管の狭窄や子宮口の癒着を引き起こすことがあります。一方、PDTは子宮頸部の形態と機能を最も良く温存できる子宮温存治療法であり、妊娠や出産を希望する患者さんにお勧めしています。PDT外来では、PDTに関する詳細な説明を行い、治療の日程を設定していきます。

主な診療内容 子宮頸部病変に対するPDT、第2世代PDT臨床試験
診療日時 毎週 木曜日、土曜日 (完全予約制)
担当医師 坂本 優

更年期外来について

 更年期外来では、各年代の女性における健康問題の特殊性を考慮し、局所的な健康問題から全身的な健康に関する問題までを総合的に評価し、精神的な健康と身体的な健康の両面を含む、女性の生涯にわたる疾患予防と健康増進を支援します。

婦人科手術件数 月経異常・障害(月経不順、生理痛、月経前緊張症など)、不妊症、子宮・卵巣の疾患(子宮内膜症、子宮筋腫、子宮がん、卵巣腫瘍・がん)、乳房の疾患、更年期の健康問題(更年期障害、肥満、脂質異常症、骨粗鬆症、うつなど)、生活習慣病、メタボリックシンドローム、ホルモン補充療法、食事・栄養指導、カウンセリング
*必要に応じて、各専門医と協力して診療に当たります。
診療日時 毎週 火曜日  9:00~15:00(予約制)
担当医師 廣瀬 明日香

病棟

 病棟には、4名の常勤医師が配置され、診療にあたっております。
毎週月曜日には病棟回診を実施し、水曜日には病棟カンファレンスを開催しております。これにより、当科に入院中および入院予定の患者様の病状を全医師が共有し、的確な診療を行っています。
 手術は毎週月曜日、水曜日、金曜日に行われており、一方でPDT治療は毎週木曜日に行われています。

外来診療担当日割

科名

(午前のみ)
婦人科
馬屋原 健司
※第1.3は手術の為休診あり

松岡 和子
坂本 優★
松岡 和子

廣瀬 明日香
【更年期外来】
坂本 優★
田中 忠夫
廣瀬 宗
坂本 優★
馬屋原 健司
(第1,3)
坂本 優★

馬屋原 健司
(第1,3)廣瀬 宗
(第1,3)
坂本 優★

(第1,3)
菅野 康吉★

(第1,3)
藤原 有紗★

馬屋原 健司
※第1.3は手術の為休診あり

松岡 和子

菅野 康吉★
廣瀬 明日香
【更年期外来】

(第4)藤原 有紗

菅野 康吉★
田中 忠夫
馬屋原 健司
藤原 有紗
(第1,3,5)
馬屋原 健司

(第2,4)
藤原 有紗

滝川 彩

菅野 康吉★

※★の診療は完全予約制となりますのでご了承ください。
赤字は女性医師の外来となります。

医師紹介

坂本 優(院長、レディースセンター長)

坂本 優

東京慈恵会医科大学客員教授
日本婦人科がん分子標的研究会 代表世話人

  • 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、指導医
  • 日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医、指導医
  • 日本内視鏡外科学会認定 腹腔鏡技術認定医
  • 日本産科婦人科内視鏡学会認定 腹腔鏡技術認定医
  • 日本レーザー医学会認定 レーザー専門医、指導医
  • 日本臨床細胞学会認定 細胞診専門医
  • 東京都医師会認定 母体保護法指定医
  • 日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医
  • 日本産婦人科乳腺医学会認定 乳房疾患認定医
  • 中央精度認定機構認定 検診マンモグラフィ読影認定医
  • 日本医師会認定 産業医
  • 日本HBOC(遺伝性乳癌卵巣癌)コンソーシアム教育セミナー全課程修了

馬屋原 健司(婦人科部長)

山口大学医学部卒
がん研有明病院婦人科 前副部長

  • 日本産科婦人科学会専門医
  • 日本婦人科腫瘍学会専門医、指導医
  • 日本がん治療認定医機構認定医
  • がんリハビリテーション研修会修了

松岡 和子(婦人科医長)

  • 日本産科婦人科学会専門医、指導医
  • 日本婦人科腫瘍学会専門医、指導医
  • 日本臨床細胞学会専門医
  • 日本内視鏡外科学会認定 腹腔鏡技術認定医
  • 日本産科婦人科内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 厚生労働省後援・新リンパ浮腫研修修了
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了

廣瀬 宗(婦人科医長)

  • 日本産科婦人科学会専門医

藤原 有沙(婦人科医員)

田中 忠夫(婦人科顧問)

東京慈恵会医科大学医学部卒

東京慈恵会医科大学名誉教授

専門領域:婦人科腫瘍学、生殖免疫学

  • 日本産科婦人科学会専門医

滝川 彩(非常勤医員)

  • 日本がん治療認定医機構認定医
  • 日本婦人科腫瘍学会指導医・専門医

廣瀬 明日香(非常勤医員)

三浦 貴大(非常勤医員)