当科では腹部消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、結腸、直腸)および腹部実質臓器(肝臓、胆のう、胆管、膵臓、脾臓)を対象とした 良悪性疾患に対して幅広く治療を行っています。
特に癌に対しては、早期であれば、消化管内科と連携して内視鏡的治療を行い、手術が必要であれば、可能な限り創が小さく、 術後の回復が早い腹腔鏡下手術を行うようにしています。また、遠隔転移(肝臓、肺、骨などへの転移)を伴う消化器癌に対しては、
腫瘍内科と連携して集学的治療(手術と抗癌剤投与の組み合わせ治療)を行っています。
腹腔鏡下手術とは
お腹の中を炭酸ガスで膨らませながら、小さい創部から腹腔鏡という細長いカメラをお腹の中に入れて行う手術のことです。下の写真にもあるように、
創部が小さくてすむので術後の回復が非常に早く、一般的な開腹手術と比較して創部の痛みが軽く、目立ちにくいことが一番の特長です。


腹腔鏡下手術:トロカールという穴から細長い器具を入れて手術を行います
腹腔鏡下手術は1980年に初めてドイツで行われました。最初は虫垂(いわゆる盲腸)を切除する手術が行われましたが、 その後、腹腔内のさまざまな臓器を切除する手術に応用されました。
現在では、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓 などを対象としたさまざまな疾患に対して腹腔鏡下手術が行われています。
当科では、胃、小腸、大腸、直腸、肝臓、胆嚢、膵臓、そけいヘルニアに対する腹腔鏡下手術を行っています。
腹腔鏡下手術の歴史
1980年 世界初 腹腔鏡下虫垂切除術
1987年 世界初 腹腔鏡下胆嚢摘出術
1990年 日本初 腹腔鏡下胆嚢摘出術
1991年 世界初 腹腔鏡下大腸切除術
1991年 世界初 腹腔鏡下胃切除
1992年 世界初 腹腔鏡下肝切除術
1993年 日本初 腹腔鏡下大腸切除術
1993年 日本初 腹腔鏡下肝切除術
1993年 世界初 腹腔鏡下膵切除術
腹腔鏡下手術の長所・短所
長所
- 創部が小さくてすむ
- 普通の開腹手術と比べて手術後の回復が早く、入院期間が短くてすむ
- カメラの拡大視野効果により、解剖がより分かりやすくなることで詳細な手術が可能になる
短所
- 普通の開腹手術と比べて、手術時間が若干長くなる
- 直接臓器を触りながら手術が出来ないため、高度なテクニックが必要とされるため、外科医に技術格差が生じる
当科における結腸・直腸癌に対する腹腔鏡下手術と開腹手術の割合

大腸癌に対する腹腔鏡下手術の割合

当科では、腹腔鏡下手術を積極的に行っています。特に結腸・直腸手術は約70%を腹腔鏡下に行っており、全国平均と比較して割合が高いです。
進行結腸・直腸癌に対しても腹腔鏡下手術を行っていますが、手術前の検査で高度リンパ節転移や多臓器転移(肝臓、肺など)を伴っている場合には、手術を行う前に全身化学療法をする場合があります。
当科での腹腔鏡下手術適応
胃
- 胃内視鏡で切除不可能な早期胃癌
- リンパ節転移のない進行胃癌
- 進行胃癌に対するバイパス手術
- 胃粘膜下腫瘍 など
小腸
大腸・直腸癌
- 大腸内視鏡で切除不能な早期大腸癌
- 進行大腸癌(リンパ節転移症例を含む)
- 遠隔転移(肝・肺転移など)を伴う進行大腸癌
- 腸閉塞を伴う大腸癌
そけいヘルニア
胆嚢
肝臓
※いずれも肝部分切除と外側区域切除の適応となる症例を対象としています
膵臓
上記のように、当科では手術侵襲(手術によるストレス)が少なく、術後の回復が早い腹腔鏡下手術を積極的に行っています。
詳しい適応については、外来でお話させて頂きますので、まずは御相談下さい。
集学的治療
当科では、遠隔転移(肝臓、肺、骨などへの癌転移)を伴う消化器癌に対しても当院消化器内科や腫瘍内科と連携して積極的に治療しています。
手術だけでは完全に取り切れない場合でも、臓器によっては(特に大腸癌など)全身化学療法(いわゆる抗癌剤治療)と組み合わせた集学的治療を行うことにより、良好は成績が出ています。
疾患により、さまざまな治療法がありますので、まずは外来で御相談下さい。
対象疾患
- 遠隔転移を有する胃癌、肝癌、胆道癌、膵癌、大腸・直腸癌 など
腸閉塞を伴った大腸癌と肝臓への転移を認めた患者さんの治療例
- 腸閉塞を認めていたために、まずは腹腔鏡下大腸切除を行い、食事が出来るようになりました
- 初診時に肝臓への大きな転移を認めていたため、大腸を切除した後に全身化学療法(抗癌剤治療)を行いました

大腸癌肝臓転移のCT画像 黒いしこりが肝転移です。 大きいので、まずは抗癌剤治療を行いました
- 肝臓転移は、抗癌剤治療後にだいぶ小さくなったため、肝臓の右側を切除する肝右葉切除を予定しました

抗癌剤治療後の肝転移のCT画像 上の画像と比較してだいぶ小さくなったため、肝臓切除を予定しました
- 肝切除後3年経ちますが、再発なく元気に通院されています

肝臓の右側を切除した後のCT画像 再発はありません
以上のように、当科では手術のみではなく、さまざまな治療を組み合わせた集学的治療を行っています。
外来診療担当日割
※赤字は女性医師
※★は予約のみ
研究発表
2014年度
- 当院における消化器外科SSIサーベイランスの実際:中規模病院に出来ること
第27回日本外科感染症学会総会
- 腹腔鏡下胆嚢摘出術困難症例に対する安全な手術手技
第27回日本内視鏡外科学会総会
- 腹腔鏡下結腸切除術後のポートサイトヘルニアから絞扼性イレウスが発症した1例
第27回日本内視鏡外科学会総会
- 腹腔鏡下虫垂切除術後に診断された虫垂癌の2例
第27回日本内視鏡外科学会総会
- アルコール性肝硬変、腹水に伴う臍ヘルニア破裂の1例
第76回日本臨床外科学会総会
- 胆嚢摘出術困難症例に対する腹腔鏡下切除の工夫
第76回日本臨床外科学会総会
- 局所進行S状結腸癌に対して術前化学療法が奏功した2例
第69回日本消化器外科学会総会
- StageIA胃癌術後異時性小腸および副腎転移に対して集学的治療を行った1例
第69回日本消化器外科学会総会
- 胃癌同時性肝転移切除後5年に診断された肝内胆管癌の1切除例
第49回肝癌症例検討会
- 当院における消化器外科SSIサーベイランスと予防対策の取り組み
第39回日本外科系連合学会総会
- 外科領域手術と術後感染およびがん再発との因果関係に関する検討
第585回デンタルセミナー東京
- 下部消化管術後SSIにおけるリスク因子と予防策の検討
第29回日本環境感染学会総会
- 当科における腹腔鏡下手術
杏雲堂がん記念講演
2013年度
- 同時性多発大腸癌に対して腹腔鏡下手術を施行した一例
第26回日本内視鏡外科学会総会
- 開腹歴を有する腹腔鏡下下部消化管手術の検討
第26回日本内視鏡外科学会総会
- 術前に後腹膜腫瘍が疑われた卵巣奇形腫に対し、腹腔鏡下切除し得た1例
第26回日本内視鏡外科学会総会
- 当科における下部消化管術後SSIの検討
第26回日本外科感染症学会総会
- 強皮症に合併した盲腸癌の一例
第75回日本臨床外科学会総会
- 胆嚢内遊離ガス像を契機に診断し得た十二指腸潰瘍胆嚢穿通の1例
第75回日本臨床外科学会総会
- 下部消化管術後SSI予防策の検討
第38回日本外科系連合学会総会
- 診断に苦慮した急性胆管胆嚢炎併発孤立性微小肝膿瘍の1例
第49回日本胆道学会総会
研究論文発表
- CTで術前診断しえた左傍十二指腸ヘルニア変異型の1例
外科(0016-593X)75巻13号 Page1507-1509
- 胆嚢摘出術後腹部ドレーン出血を契機に診断された先天性血友病Bの1例
日本消化器外科学会雑誌(0386-9768)46巻9号 Page662-668
- 回盲弁lipohyperplasiaが誘因と考えられた回腸末端多発憩室炎の1例
日本消化器外科学会雑誌(0386-9768)46巻2号 Page122-129
- 嚢胞性変化を示した胃外発育型胃癌の1例
癌と化学療法(0385-0684)39巻12号 Page2333-2335
- 膵癌骨転移に対して疼痛緩和放射線照射が有効であった1例
癌と化学療法(0385-0684)39巻12号 Page2143-2145
- S状結腸癌術後2ヵ月目に多発性骨髄腫と診断された同時性重複癌の1例
日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)73巻12号 Page3315-3319
- インフリキシマブ治療中のpress through package誤飲による小腸穿孔の1例
日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)73巻12号 Page3177-3181
- C型肝硬変合併肝細胞癌に発生した腸腰筋膿瘍の1例<
日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)72巻12号 Page3125-3129
- MRIを指標に保存的治療にて治癒し得た胃癌術後硬膜外膿瘍の1例
日本外科感染症学会雑誌(1349-5755)8巻3号 Page273-277
- 回腸腸間膜原発炎症性悪性線維性組織球腫の1例
日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)72巻3号 Page806-811
患者さんへ 専門医制度と連携したデータベース事業について