消化器外科

杏雲堂病院消化器外科から患者さんへ

 外科治療、すなわち手術と言えば、痛くて辛そうなイメージがあるかと思います。確かに、身体に一時的なダメージを受けながら治療することは、良いとは言えないと思います。当科は、どうしても手術でしか治らない消化器外科領域疾患に対して、限りなく痛みや苦痛の少ない治療を心がけています。手術は、キズが小さくて術後の回復の早い腹腔鏡下手術を積極的に行っています。さらに、術後の痛みや辛さに対する痛み止め等の治療に関しては、術後疼痛管理チーム(院内の専門家が集まって形成されたチーム:麻酔科・薬剤科・看護部)にお願いして、必要最小限の辛さですむような対策を取っています。

消化器外科について

 当科では、主に腹部消化管(胃、十二指腸、小腸、結腸、直腸、肛門)腹部実質臓器(肝臓、胆のう、胆管、膵臓、脾臓)、鼠経ヘルニアおよび癒着性腸閉塞などを対象とした両悪性疾患に対して幅広く治療を行っています。特に、キズが小さく、術後の回復が早い腹腔鏡を用いた手術を得意としています。さらに、遠隔転移(肝臓、肺、腹膜、骨など)を有する進行消化器癌に対しても、消化器内科や腫瘍内科と連携して可能な限り集学的治療(手術と抗癌剤投与や放射線治療等を組み合わせた治療)を行っています。その際に、大腸癌など腸閉塞を起こして食べられなくなっているような状況を回避するための腹腔鏡下手術も行っています。このように、癌に対する治療のみならず、生活の質も向上するような治療を患者さん一人ひとりの状況に応じてきめ細かく行っています。気になる事がありましたら、まずは外来までお越し下さい。

医師紹介

川本 潤(副院長、消化器外科科長)

川本 潤
  • 千葉大学医学部臨床教授
  • 千葉大学臓器制御外科非常勤講師
  • 日本外科学会認定医、専門医
  • 日本外科学会指導医
  • 日本消化器外科学会専門医、指導医
  • 日本消化器外科学会指導医
  • 日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科領域)
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本がん治療認定医機構認定医
  • 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
  • 日本外科感染症学会外科周術期感染管理認定医、教育医
  • 東京都身体障害者福祉法指定医
  • Certificate of Master of SurgicalOncology (IASGO)
  • 日本静脈経腸栄養学会Total Nutritional Therapy(TNT)認定医
  • ICD(感染コントロールドクター)認定医
  • 日本肝胆膵外科学会評議員
  • 日本外科感染症学会評議員
  • 緩和ケア研修会修了

内 玲往那(医長)

  • 日本外科学会外科専門医
  • 日本消化器外科学会専門医
  • 日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科領域)
  • 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
  • 東京都身体障害者福祉法指定医
  • 日本静脈経腸栄養学会TNTコース修了
  • がんリハビリテーション研修会修了
  • 緩和ケア研修会修了

髙木 諭隆(医員)

  • 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
  • 日本消化器外科学会専門医
  • 日本外科学会専門医
  • 日本肝臓学会専門医
  • がんリハビリテーション研修会修了
  • 緩和ケア研修会修了

仲 祐太朗(医員)

 

杏雲堂病院紹介外科の特徴

腹腔鏡下手術

 お腹の中を炭酸ガスで膨らませながら、小さい創部から腹腔鏡という細長いカメラをお腹の中に入れて行う手術のことです。下の写真にもあるように、創部が小さくてすむので術後の回復が非常に早く、一般的な開腹手術と比較して創部の痛みが軽く、目立ちにくいことが一番の特長です。

腹腔鏡下手術の創部

腹腔鏡下手術後の様子

腹腔鏡下手術:トロカールという穴から細長い器具を入れて手術を行います。

 腹腔鏡下手術は1980年に初めてドイツで行われました。最初は虫垂(いわゆる盲腸)を切除する手術が行われましたが、 その後、腹腔内のさまざまな臓器を切除する手術に応用されました。
 現在では、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓 などを対象としたさまざまな疾患に対して腹腔鏡下手術が行われています。
 当科では、胃、小腸、大腸、直腸、肝臓、胆嚢、膵臓、そけいヘルニアに対する腹腔鏡下手術を行っています。

腹腔鏡下手術の長所・短所

長所
  • 創部が小さくてすむ。
  • 普通の開腹手術と比べて手術後の回復が早く、入院期間が短くてすむ。
  • カメラの拡大視野効果により、解剖がより分かりやすくなることで詳細な手術が可能になる。
短所
  • 普通の開腹手術と比べて、手術時間が若干長くなる。
  • 直接臓器を触りながら手術が出来ないため、高度なテクニックが必要とされるため、外科医に技術格差が生じる。

治療対象疾患

【胃】早期・進行胃癌、胃粘膜下腫瘍、胃悪性リンパ腫、胃潰瘍、食道裂孔ヘルニア、その他

【小腸】腸閉塞、クローン病、小腸憩室症、小腸癌、小腸悪性リンパ腫、その他

【虫垂】急性・慢性虫垂炎、虫垂憩室炎、虫垂腫瘍、虫垂癌、その他

【結腸・直腸】早期・進行大腸癌、大腸悪性リンパ腫、腸閉塞、大腸憩室炎、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎、その他

【肛門】内・外痔核、痔瘻、肛門周囲膿瘍、肛門管癌、肛門ポリープ、その他

【鼠経(そけい)部】鼠経ヘルニア、大腿ヘルニア、鼠径部腫瘤、その他

【胆嚢(たんのう)】胆嚢結石症、胆嚢ポリープ、胆嚢癌、その他

【胆管】胆管結石症、胆管癌、総胆管拡張症、その他

【肝臓】肝嚢胞、肝膿瘍、肝血管腫、原発性肝癌、転移性肝癌、良性肝腫瘍、その他

【膵臓】急性・慢性膵炎、膵石症、膵管胆管合流異常症、膵内分泌腫瘍、腫瘍性膵のう胞、膵管癌、その他

【腸閉塞】癒着性腸閉塞、麻痺性腸閉塞、腫瘍性腸閉塞、その他

集学的治療

 消化器癌は、ある程度進行すると、癌が出来た場所から離れた臓器に転移することがあります。手術で取り切れる場合と、そうでない場合があります。そのようなときには、必要に応じて癌が出来た部位を手術で取り除き、その他の部位に関しては、抗がん剤や放射線治療を行う集学的治療を関係診療科と協力して積極的に治療しています。

治療の一例

腸閉塞を伴った大腸癌と肝臓への転移を認めた患者さんの治療例

  • 腸閉塞を認めていたために、まずは腹腔鏡下大腸切除を行い、食事が出来るようになりました。
  • 初診時に肝臓への大きな転移を認めていたため、大腸を切除した後に全身化学療法(抗癌剤治療)を行いました。

集学的治療-1

大腸癌肝臓転移のCT画像  黒いしこりが肝転移です。 大きいので、まずは抗癌剤治療を行いました。

  • 肝臓転移は、抗癌剤治療後にだいぶ小さくなったため、肝臓の右側を切除する肝右葉切除を予定しました。

集学的治療-2

抗癌剤治療後の肝転移のCT画像  上の画像と比較してだいぶ小さくなったため、肝臓切除を予定しました。

  • 肝切除後3年経ちますが、再発なく元気に通院されています。

集学的治療-3

肝臓の右側を切除した後のCT画像  再発はありません。

 以上のように、当科では手術のみではなく、さまざまな治療を組み合わせた集学的治療を行っています。

主な腹腔鏡下手術における入院期間中の予定について

腹腔鏡下胆嚢摘出術(胆石性胆嚢炎・胆嚢ポリープなど)

  • 手術前日:入院(原則10時入院、入院時間の変更は要相談)
  • 手術当日:通常60~90分程度の全身麻酔下で手術を行う。
    ※ 炎症が強い場合には手術時間延長の可能性あり。
  • 術後1日目:朝~食事開始
  • 手術後2日目以降:退院
    ※炎症所見が強い場合には、お腹の中に管を留置する場合があり、入院期間が少し長くなる可能性があります

腹腔鏡下虫垂切除術(急性虫垂炎など)

  • 手術前日:入院(原則10時入院、入院時間の変更は要相談)
    ※ 緊急手術の場合には、当日入院
  • 手術当日:通常60~90分程度の全身麻酔下で手術を行う。
    ※ 炎症が強い場合には手術時間延長の可能性あり。
  • 術後1日目:朝~食事開始
  • 手術後2日目以降:退院
    ※炎症所見が強い場合には、お腹の中に管を留置する場合があり、術後入院期間が延長することがあります。

腹腔鏡下結腸切除術(大腸癌・大腸憩室炎など)

  • 手術2日前:入院(原則10時入院、入院時間の変更は要相談)
  • 手術2日前:絶食+水分摂取のみ可能、下剤内服開始
  • 手術当日朝~絶飲食
  • 手術当日:通常3~6時間程度の全身麻酔下で手術を行う。
    ※ 炎症が強い場合には手術時間延長の可能性あり。
  • 術後1日目:朝~水分摂取のみ再開
  • 術後4日目:腹部ドレーン抜去(お腹の中に留置してある管を抜く)
    硬膜外麻酔カテーテル抜去(背中に入っている痛み止めの管を抜く)

外来診療担当日割り

科名

(午前のみ)
消化器外科
仲 祐太朗 高木 諭隆 内 玲往那 - 川本 潤
【胆石症外来】
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- 仲 祐太朗 川本 潤 - 内 玲往那
高木 諭隆
ストマ外来★

赤字は女性医師
※★は予約のみ

セカンドオピニオン外来

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