消化器肝臓内科はおなかの病気、消化器疾患を担当します。消化器には食道、胃、大腸、肝臓、胆道、膵臓という様々な臓器があり、それぞれいろいろな病気がありますが、この全般にわたって専門的な医療を提供いたします。心のこもった技術を用いて、小さな侵襲で大きな効果を上げることを目標に日常診療/治療に取り組んでいます。また外科、放射線科、腫瘍内科など他科との連携も重視しており、内科的治療法と外科的治療法、放射線療法などを組み合わせたより良い治療を提案いたします。おなかに関する不安はどうぞお気軽にご相談ください。
学会等施設認定
日本消化器病学会認定施設 指導医3名
日本消化器内視鏡学会認定施設 指導医2名
日本肝臓学会 指導医2名
日本内科学会 認定内科医1名/総合内科専門医2名
日本超音波学会 専門医1名
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医2名
日本ヘリコバクターピロリ学会 ピロリ菌感染症認定医1名
東京大学消化器内科教室 関連病院
急性肝炎は、急激に肝臓の細胞が破壊され、肝機能が低下した状態であり、肝炎ウィルスによる肝炎(A型肝炎、B型肝炎、E型肝炎)、薬剤・健康食品などによる肝炎、アルコール性肝炎などがあります。症状としては倦怠感や食欲低下が多くみられます。症状が強い場合は入院の上、安静に過ごしつつ点滴などを行い、体調を整えて自然回復を待つことになります。原因となりうる薬剤があれば中止します。通常1ー3週ほどで改善し、退院可能となりますが、重症例では、肝不全の状態となり、意識障害や顕著な黄疸が出現し、大学病院などの高次施設での集中治療や、肝移植を要することがあります。またB型肝炎ではウィルスが完全には消えずに肝炎が慢性化することがあり、症状が改善してからもしばらく経過観察が必要です。
C型肝炎ウィルスは一度感染すると多くの方が慢性化し、生涯にわたり感染が持続し、数十年かけて肝硬変に至ります。肝硬変になると高率に肝がんを発生します。2015年以降、治療法が劇的に進歩し、抗ウィルス薬を2~3か月内服するのみで、副作用もほとんどなくほぼ確実にウィルスを駆除できるようになりました。ただし、ウィルスを駆除できても、将来の発がんの危険がなくなるわけではなく、半年に1回程度は肝がんが発生していないかどうか、血液検査や超音波検査にてチェックすることが必要です。
わが国には自分がC型肝炎ウィルスに感染していることに気付いていない方がまだ多数残っていると言われています。通常の検診ではC型肝炎の検査が含まれていないことがありますので、肝機能異常などで再検査などを指示された場合、一度はC型肝炎ウィルスの検査を受けることが必要です。
B型肝炎ウィルスは幼少時の感染では高率に、成人感染でも時に慢性化し、現在の医療では完全に駆除することができません。血液中のウィルス量が多く、強い炎症が持続していると(AST・ALTが高い状態)、肝硬変に進行しやすく、またがんも発生しやすくなります。しかしウィルスの増殖を抑える薬剤(核酸アナログ製剤)を内服することにより、肝炎は沈静化し(AST・ALTが低い状態)、肝硬変への進行も食い止めることが出来ます。ただし沈静化していても肝がんが発生する危険はあり、半年に1回程度は肝がんが発生していないかどうか、血液検査や超音波検査にてチェックすることが必要です。
生活習慣による慢性肝疾患の原因には、大きくわけてアルコール性肝障害と脂肪肝があります。
アルコール性肝障害は、過度の飲酒から来る肝障害です。ただし、どれくらいアルコールを飲むと肝障害が出るかは、個人差が大きく、自分では少ししか飲んでいないつもりでも肝障害は起こりえます。また同じ飲酒量であれば、男性よりも女性のほうが肝障害が出やすいとされています。血液検査ではAST>ALTの肝障害で、γGTP高値が特徴です。一部の方は十~数十年で肝硬変、肝不全に至ります。有効な薬物治療はなく、飲酒量を減らす以外に対処法はありません。
脂肪肝は、多くは炭水化物(穀物類)・糖質の食べ過ぎにより発生します。(そのため脂肪肝の方は糖尿病のリスクも高い状態です。)炭水化物・糖質は小腸でブドウ糖(グルコース)に分解されて血液中に吸収され、エネルギー源として利用されますが、余分なブドウ糖は、肝臓で中性脂肪に作りかえられた上で、いざという時のエネルギー源として蓄えられます。脂肪が肝細胞内に過剰に蓄えられて細胞が破壊されてしまう状態が脂肪肝であり、血液検査ではAST<ALTの肝障害がみられ、γGTPも高値となります。一方、肝臓で作られた脂肪が血液によって皮膚や腸間膜に運ばれて蓄えられたものが皮下脂肪や内臓脂肪であり、これが肥満の原因です。なお、アルコールも、肝臓で中性脂肪に作りかえられるため、多量飲酒は脂肪肝や肥満の原因となります。
脂肪肝に有効な薬物治療はなく、摂取する炭水化物・糖質を減らすことが最も有効です。(これは肥満・糖尿病の予防や治療も兼ねることになります。)「あぶらっこいもの」を控えても多くの場合改善しません。米、パン、麺類、甘いもの(お菓子、ジュース類、果物)や、アルコールはほどほどにし、肉、魚、卵、豆腐などのタンパク質や、野菜類を積極的にとるようにします。
脂肪肝というと軽く見られがちですが、実は一部の方では進行が早く、数十年で肝硬変から肝不全に至ることがあります。肝硬変になれば肝がんも出来やすくなります。血小板数が低下している方は、すでに肝硬変かそれに近い状態の可能性があり特に注意が必要です。検診で脂肪肝を指摘された場合、将来のリスクを低下させるために、食生活を少しずつ見直していくことが大切です。
慢性肝炎により、何らかの原因で肝細胞が少しずつ破壊されていく状態が長期間続くと、やがて肝臓の中で線維組織が増え、肝臓が委縮して硬くなります。この状態のことを肝硬変といいます。肝硬変となった肝臓は本来の機能を果たせなくなってくるため(肝不全)、今まで保たれていた体内の色々なバランスが少しずつ崩れ、黄疸、腹水貯留、むくみ、肝性脳症(意識障害)、食道静脈瘤といった様々な病態を引き起こします。また、肝硬変が重いほど、肝がんが発生する危険が高くなります。
むくみがひどい場合や、腹水が貯留してきた場合は利尿剤を内服したり日々の生活において塩分を控えることが必要となります。肝性脳症は、便秘を機に意識障害の症状が出ることが多いので、日ごろの排便のコントロールが重要になってきます。また肝性脳症がある方は、自動車の運転を控える必要があります。
症状が強いときは入院治療が必要となります。原因となる肝硬変自体を改善させることは困難なため、こうした症状とうまく折り合いをつけて日常生活を送れるようにすることを目指します。
肝細胞がんは、B型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝など、何らかの慢性肝疾患のある肝臓から発生し、特に肝硬変の状態になると多く発生します。以前多かったC型肝炎が原因の患者さんが徐々に減ってきている一方で、脂肪肝が原因の患者さんが増えてきています。
治療法には、肝切除、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術、肝動注化学療法、全身化学療法、放射線治療と、多くの選択肢があります。がんの大きさや個数、血管(門脈)への浸潤の有無、肝臓外への転移の有無や、肝機能の良しあし(肝硬変の程度)などを総合的に判断して治療法を決定します。肝切除と全身化学療法は、肝機能が良好(一般にはChild分類のA)であることが必要です。その他の治療法は、やや肝機能が低下していても(Child分類のB)おおむね可能ですが、肝機能が非常に低い場合(Child分類のC)は実施困難です。
肝細胞がんは、最初に見つかったがんを完全に治療しても、再発を繰り返すことが多く、その都度、病状に合った治療を繰り返していくことになります。
■ ラジオ波焼灼術
超音波装置で観察しながら肝臓がんに電極針を挿入し、交流電流を発生させて電極針の周囲を加熱し、がんを凝固壊死させる治療法です。5~10分の加熱により直径2~3cmの球状の範囲が凝固されます。この範囲に完全に収まる小さながんであれば1回の加熱で確実に治療できます。それ以上の大きさのがんに対しては、針を少しずつずらして複数回挿入して加熱する必要がありますので、大きくなるほど治療の確実性や安全性が低下します。一般に3cmまでのがんが適応とされ、特に2cm程度までの小さながんに適した治療法です。また、同時に3個程度まで治療することも可能です。それ以上個数が多い場合は、肝動脈塞栓術が適しています。治療に要する時間は1~2時間です。
がんを加熱する際は、がんの場所よっては強い痛みが発生することがありますが、当科では治療時に麻酔薬を十分使用しますので、眠った状態で痛みに対する不安や恐怖感がなく治療が受けられ、通常、治療中の記憶は残りません。
治療後は数日間、発熱や疼痛、食欲低下などが見られます。当院では退院は最短で治療後3日目としております。
治療合併症として、腹腔内出血、胸腔内出血、肝梗塞、肝内胆管損傷、肝膿瘍、胃腸・胆嚢など周囲臓器の熱損傷などがあり、重症の場合は、回復のため輸血や手術、長期の入院を要することがあり、死亡例もあります。
合併症の危険性は、病巣の場所、大きさ、肝機能の良しあしにより、あらかじめある程度まで予想できます。危険性が非常に高いと判断される場合は、他の治療法をお薦めします。
■ 肝動脈塞栓術
右足の付け根の動脈を穿刺して、カテーテルを肝動脈まで挿入し、がんへの血流を遮断するための粒子製剤(ゼラチンパウダー、ビーズ製剤)を動脈内に注入する治療法です。1個の大きながんを集中的に治療することもできますし、肝臓全体に散らばったがんを一度に治療することもできますので、適応範囲の広い治療法です。一般的には、外科切除やラジオ波焼灼術では治療できない場合に選択されます。ただし効果はやや不確実で、がんを根治させることは難しく、多くの場合、3~6か月ごとに治療を繰り返す必要があります。それでもがんの進行が抑えられない場合は、肝動注化学療法や全身化学療法が考慮されます。
治療時間は1~2時間、治療後は数日から1週間程度、発熱や腹痛、食欲低下などが見られます。当院では退院は最短で治療後2日目としております。
治療合併症としては、肝障害、肝梗塞、肝膿瘍、肺炎などがありますが、ラジオ波と比べるとおおむね安全といえます。
■ 全身化学療法
2019年8月現在、内服薬のレンバチニブ、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、点滴薬のラムシルマブの4種の分子標的薬が使用できます。副作用は4つの製剤でほぼ共通しており、手指や足の裏の皮膚がただれる「手足症候群」、血圧上昇、タンパク尿、甲状腺異常、食欲低下、体力低下、倦怠感、肝障害、腎障害などがみられます。肝機能が低いと副作用が重くなりやすいので、治療にあたっては、もともとの肝機能が良好(一般にはChild分類のA)である必要があります。
肝内胆管がんは、切除可能であれば切除、切除困難であれば全身化学療法が行われます。
転移性肝がん(肝転移)は、大腸がんや胃がんなど、他の臓器に発生したがんが、血流やリンパ流にのって肝臓に転移したもので、主に原発がんの種類に応じた全身化学療法が行われます。
肝内胆管がんや転移性肝がんに対するラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術、肝動注化学療法については、専門学会や診療ガイドライン等で有効性はほぼ否定されており、現在当科では原則として実施しておりません。
当院の胃カメラ・大腸カメラは「より楽に、より精密に」という内視鏡検査の理想を追求しています。その実現のために3つの要素を重要視しています。
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■ 内視鏡検査室①
ピロリ菌は胃がんのリスクだけでなく、胃・十二指腸潰瘍、リンパ腫など様々な病気の原因となります。胃がんになった人のほとんどがピロリ菌感染者であり、ピロリ菌に感染したことがなければ胃がんになることはほとんどありません。ピロリ菌は幼少時に感染し、持続的な炎症の結果、萎縮性胃炎という慢性胃炎に進展します。この慢性胃炎から胃がんが発生してくると考えられています。中高年の半数以上がピロリ菌に感染しており、そのほとんどが無症状です。
胃カメラでの詳細な観察によって、ピロリ菌の感染状況を想定することができます。ピロリ菌感染が疑われる場合には、抗体検査や呼気試験などの感染確定のための検査を行い、除菌を提案します。除菌によって胃がんのリスク軽減が期待できるからです。またピロリ菌感染に伴う慢性胃炎の程度によって、胃がんのリスク評価をすることができます。胃がんのリスクに応じて胃カメラ検査を計画的に行うことで胃がんの早期発見が可能となり、内視鏡治療での治癒、ひいては胃がんによって命を落とすことを防ぐのです。
早期に発見された食道がん・胃がん・大腸がんはお腹を切らずにカメラによる治療で治癒が期待できます。手術に比べて体への負担が少なく、臓器を温存することができるので、その後の生活の質の低下がありません。
粘膜表面に広がる早期がんは病変を含めるように剥ぎ取ることで完全に切除することができます。ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という治療法です。ESDの対象となる病変はリンパ節転移の心配のない「浅いがん」です。通常であれば翌日からご飯を食べることができ、約1週間で退院することができます。経験豊富な内視鏡治療の専門医が丁寧に治療を行います。
胃の表面に広がる早期胃がんを剥ぐように切除しました。2か月後には治療部の潰瘍は閉鎖します。
食道がんも早期に見つけることができれば、内視鏡にて治療可能です。食道の壁は薄いため慎重に処置をすすめていきます。
表面にとどまる浅い大腸がんも、内視鏡治療の適応です。大腸の壁は薄いため慎重に処置をすすめていきます。
肛門のすぐ裏に広がる大きな直腸がんでしたが、カメラで病変を剥ぐことによって人工肛門を回避できました。
大腸ポリープには前がん病変である腺腫といわれるポリープが多く、切除することによりがんを予防することが可能です。しかし大腸ポリープはまったくの無症状で、健診でひろく採用されている便潜血検査では大腸ポリープの有無は評価できません。腹痛や血便などの症状がなくても、また便潜血検査でひっかからなくても、一度は大腸カメラを受けることをおすすめします。たまたま施行した大腸カメラで大事にならずに治療できる病変が発見される方はとても多いのです。大腸カメラ検査の際に見つかった小さなポリープはその場で治療を行います。(日帰り手術) 治療後数日間注意していただきたいことがあります。比較的大きい病変の場合は、念のため2-3日間の入院での治療をおすすめしています。ポリープの状況に応じて定期的に検査を受けることによって、大腸がんの予防を目指します。
ポリープの根本に液体をうちこみ、病変を持ち上げたうえでスネアをかけて切除します。10mmくらいまでのポリープは日帰り治療を行います。
茎の太いポリープ。出血のリスクが高いため、留置スネアをかけてからポリープを切除しました。大きなポリープは数日の入院治療となります。
ひどい下痢や腹痛、血便が続く場合には潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を疑う必要があります。大腸カメラや血液検査などを組み合わせて適切な診断を行い、症状に応じて様々な種類の薬を組み合わせて治療を行います。症状が重い場合には入院が必要となることもあります。できるだけ早期に寛解状態(症状が消失すること)にもちこむことが重要です。症状が消失した後も再燃するリスクがあるため、定期的な通院・治療が必要です。
出身教室:東京大学消化器内科
科名 | 時 間 |
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 (午前のみ) |
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消化器・ 肝臓内科 |
午 前 |
磯村 好洋 佐藤 新平 |
- | - | 近藤 祐嗣 | - | - |
午 後 |
佐藤 新平 | - | 磯村 好洋 (第1,3) 近藤 祐嗣★ (第4) 小尾 俊太郎 |
松浦 知和 | - |
※赤字は女性医師
※★は予約のみ